今週のお題「SFといえば」
「お題で複数記事を書いてはいけない」という決まりは特になさそうだったので二回目。
この作品自体は明るい作風なのですが、私の言いたいことが暗いので、以下折り畳みます。
別に「SFといえば」なテーマだったら、他にもたくさん語りたい作品はあるのですが、最近の風潮と似通うところがあったので、この本にしました。
初版発行は1998年ですが、私がこの本を買ったのは21世紀になって大分たってから買いました。買ったんですが、今は手元に見当たらないです。なんか手狭になって本を捨てなくちゃいけなくなって、その時に処分したような気も……。
あらすじ:
かなりの部分で人力に頼る、江戸時代の技術レベルまで退化した日本のとある農村。若い男女が寝物語に、「昔の日本ってどうだったのかな」というところから話が始まり、村の元技術者の老人(彼が事実上の本作の主人公)に話を聞きに行く。そこから若い人たちに、彼の眼からみた、繁栄していた日本が、江戸時代並みの社会になるきっかけの衰亡を起こしていく様を語っていく……というもの。
決定的な崩壊は端折られているので、大体バブルくらいの繁栄を維持していた頃の日本が衰亡していくんですが、思い返せばバブル崩壊の頃、こんなのんきな話を書いていたから、本当に衰亡したという気もします。
着眼点は間違ってないとは思うんですけどね。
- テスト(座学)中心の学校制度のせいで、モノづくりに適性のある人を現場に送れないことになり、品質が低下する
- 工業の衰亡が貿易の衰亡を呼び、食料やエネルギーを外国から買えなくなる
とか。
でも「どうにかなるでしょ+いざとなったら江戸時代に戻ればいい」的な感じで話が作られてるんで、特に二番目の問題がひたひたと近づいている今、読むとちょっと腹立つかもしれません。
本当に、今から見ると、外国の動き、特にアジアの諸外国の伸長を甘く見てた、見過ぎていた、という感情がふつふつと……
そもそも江戸時代は、鎖国した当初はある程度の武力(と、当時の国際関係の力学みたいなもの)で、鎖国が可能になったわけで、それがない状態で、諸外国が日本をほっといてくれるという考えがまず甘いというか。
現実には、諸外国がお金で日本の土地や工場を安く買いまくっているということが起きているわけで。
このままいくと、「日本」という国はあっちこっちにバラバラに切り売りされてなくなってしまうんじゃないかって気になりますね。マイペースに江戸時代まで退行なんて許されそうにありません。
もう一つは気候変動*1を甘く見過ぎていたこと。いまや、本来涼しいはずの北海道でも、冷房がなければ苦しい気温状況になりつつあります。いくら昔の日本の木造建築が夏に合わせて作られているからと言って、クーラーなしで生きるのは難しい。
一応、作中では小水力発電で発電しているので、電機類がまったくないわけではないし、ゴミとして廃棄された古タイヤから石油を取り出すことで、自動車も多少は動ける世界とはされているのですが……。
もっと文句を言おうかと思いましたが、記憶だけを頼りに叩くと自爆しかねないのでこの辺で打ち切ります。では。
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*1:当時から最近まで「温暖化」って言葉を使っていましたが、これがよくなかった。