ウクライナ侵攻と食糧難について書いた記事の続きです。
ウクライナ侵攻に伴う食糧問題、ついに、ロシアが自分の国の食糧を高く売りつけて儲けようとしている、という意見が出始めました。
この記事によると、
ロシアのウクライナ侵攻は世界的な食料危機を深刻化させている一方で、小麦価格の高騰などを引き起こした張本人であるロシアには利益をもたらしている。
(中略)
世界の小麦価格は今年に入って50%余り上昇しており、ロシアの大手農業コンサルティング会社ソベコンの推計によると、同国の今季ここまでの小麦輸出税収入は19億ドル(約2400億円)に上る。
英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のリサーチディレクター、ティム・ベントン氏は、オデーサ(オデッサ)港の封鎖を解除するのは制裁が緩和された場合のみとしたロシアの主張を念頭に「これは世界的なレバレッジを通じて食料を戦争の武器として使っているということだ」と述べた。
食料危機を深刻化させるロシアが得る利益-穀物を「戦争の武器」に2022年5月25日 2:52 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-05-24/RCE0DMDWLU6801
と述べています。従来の世界的な飢餓や難民発生の危惧だけでなく、ロシアが意図的にウクライナの食糧がいきわたらないようにする事で得をしようとしているのではという疑惑に一歩踏み込んで言及した形になっています。
(5月28日付記:ロシアはこうした食料に関しての国際的な非難にこたえてか、ウクライナの7つの港から海上回廊を設置すると25日に国防省を通じて明らかにしたとのこと。ただしこれに関してはウクライナ側が第三国の保証がなければ機能しないと難色をしめしているとのことです。
参考:【ウクライナ】ロシアは占領地を「踏み台」に利用、米大使が警告 2022年5月26日 15:03 JST 更新日時 2022年5月27日 3:24 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-05-26/RCH215DWLU6B01 )
さて、日本国内でもウクライナ侵攻と食料危機についてだいぶ報道されるようになりました。過去にさかのぼった形になりますが、関連記事を紹介していこうと思います。
5月15日のテレ朝のニュース
G7=主要7カ国の外相はロシアがウクライナ侵攻によって世界的な食料危機を招いていると非難する声明を採択しました。
(中略)
議長国ドイツのベアボック外相はロシアが意図的に軍事戦争を「小麦戦争」に発展させて、アフリカなど多くの国に戦争を拡大させたと指摘しました。
今後、ウクライナからの輸出再開や飢餓の恐れがある人々への支援に取り組むとしています。G7外相会合閉幕「食料危機」でロシア非難の声明採択2022/05/15 06:39
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000254726.html?display=full
以前紹介したG7の農業会合の記事ではウクライナがソ連時代に受けたホロドモールの被害を引きあいに出してはいるものの、ウクライナ以外の被害に関しては言ったのかどうかわからなかったので、外相会合の方で言及していると知って少し安心しました。
そして、地上波でもウクライナに限らず中東やアフリカで小麦不足で苦しむ人が出ていることが報道され始めました(これ以前の記事があったらすみません)
- オデーサ港が塞がれているため輸出ができないこと(倉庫から出せない小麦は2000万トンにも及ぶとか)
- ウクライナの小麦が略奪されて国外に持ち出されていること
- このままでは多くの人が餓死しかねないこと
- ミサイルで倉庫や田畑が荒らされていること
などが5月17日のテレ朝newsで報道されています。↓
ロシア船が略奪したと思われる穀物を船に積み替えていると思しき衛星写真が撮れたという報道も出ました。(5月24日)
この記事には二隻の船が確認されたとのことですが、うち一隻は以前エジプトに寄港しようとして断られた船と同じもののようだ、と記事中ではされています。(下記は5月13日の記事)
一般市民の生活への影響を伝える記事を見てみます。
少し遡った記事です。ドイツでの食料品の品薄を伝える記事。
ウクライナ抗争・ドイツのスーパーから消えた「小麦粉と食用オイル」物価高騰と品薄で不安な市民の暮らし(2022年4月27日)(ニューズウィークサイト内World Voice掲載)
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/spnoriko/2022/04/post-10.php
これによると、ドイツのスーパーから、2月の末頃から小麦粉や食用油(ひまわり油、菜種油)が消え、(文が書かれた)最近になって、一人あての制限付きで小麦粉は入手できるようになったものの、オリーブ油以外全く入手できなくなったとのこと。
ひまわり油の主な産地がウクライナだったためですが、他の欧州の国でも作られていて余裕のあるはずの菜種油まで姿を見せないとのこと。
ドイツの小麦の自給率は125%で自国需要は間に合うそうですが、それ以外のライ麦などは輸入している部分もあるためパンの値上がりが続いているそうです。
これには原材料の高騰だけでなく、コロナによる人手不足、エネルギー価格の高騰なども加わっているとのこと。
さらに肥料、飼料、燃料の値上がりによって自給できているはずのジャガイモや乳製品なども高騰していることに触れ、筆者は対策として、「市民にできることは少ないが」としながらも食品ロスを減らすこと(ドイツの食品ロスは2019年の時点で1200万トンとか)、そして買いだめによる品不足という悪循環を断ち切ることをあげています。
日本の同時期に比べてすさまじいとしか言いようのない品不足ぶりです。書かれてからひと月近く経っているので、ドイツの状態がどうなのかわかりませんが、好転していることを祈らずにはいられません。
日本でも飼料の値上がりで畜産農家が悲鳴を上げています。(2022年5月19日(木) 16:56のTBSの記事)
これによると、エサ代が1年前の1.5倍に膨れ上がったそうです。特に餌の半分を占めるトウモロコシは中国の需要増加やコロナで値上がりしていたところに、ウクライナ侵攻による値上がりが追い打ちをかけたとのことです。
日本での他の食料の値上がりについてもニュースでやっていますが、今回は割愛します。
さらに悪いことに、ウクライナに代わる生産地と目されていたアメリカやインドで熱波、さらにはフランスで干ばつでの不作が懸念されています。
2022年4月6日 20:30日経新聞の有料会員記事(会員登録すれば月10本まで無料で読めます)↓
2022/05/18 23:30のテレビ朝日の記事 ↓
2022年5月12日 18:10日経新聞の有料会員記事(会員登録すれば月10本まで無料で読めます)↓
そして日本では、干ばつとは違いますが、愛知と熊本で農業用水の施設で、川底に穴が開いたり、老朽化からか破損し、水が引けない状態になっています。これらの故障の影響が日本のコメ生産量のうち、どれくらいの割合を占めるのか分かりませんが、似たようなことが全国で起こらないことを祈るばかりです。
2022年5月18日 20時28分のNHKの記事↓
およそ4500ヘクタールの農地の他、工業用水にも影響があるとか……
川底に穴が開いた、と聞いて私もよく分からなかったのですが、この動画の説明がわかりやすかったです。
2022年05月18日 20:23熊本日日新聞 の記事↓
こちらは1000ヘクタールの農地に影響があるとのこと。
この状態を打破するためなのかわかりませんが、デンマークによるウクライナへの対艦ミサイルの供与が決まったこと。これで黒海の制海権を取り戻せればよいのですが……
2022/05/24 10:18読売新聞の記事↓
長くなりましたが、以上です。
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