株の取引記録書かなきゃ……と思いながら、これもやっぱり大事だよね、と思って、テレビ感想を書きます。(2022年9月25日細部修正。アブドゥルアジーズ王をイブン・サウードに修正するなど。)
あらすじ
1930年代、石油事業を手掛けるロックフェラー家は、建国して間もないサウジアラビア王国(以下サウジアラビア、もしくはサウジ)の初代王イブン・サウードと石油の取引を契約する。
それまで聖地メッカの巡礼からの収入があるくらいで、あまり豊かでなかったサウジアラビアは、オイルマネーによって急激な発展を遂げる。その恩恵に預かった一人に、建設業を営むムハンマド・ビンラディンがいた。
ロックフェラー家、そしてアメリカもまたサウジからの石油で潤い、両者の蜜月は続くかに見えた。
しかし、王族の腐敗などに対する反感からか、イスラム原理主義者がテロを起こすようになってしまう。
そんな中、ソビエトのアフガニスタン侵攻が起きる。サウジ政府は原理主義者をイスラム教徒のいるアフガニスタンに送り、アメリカも彼らを援助する。その義勇兵(ムジャヒディン)の中には、前述したムハンマド・ビンラディンの息子、オサマ・ビンラディンもいた。
戦争から帰国したオサマの目に映ったのは、我が物顔で母国を闊歩する米軍だった。
アメリカを憎むようになったオサマはテロリストとなり、ロックフェラー家の建てたワールドトレードセンターを狙い始める。
いくつかの前兆的なテロにより、彼をとらえようとするFBI捜査官もいたが、かつて戦ったアフガニスタンの地に潜んだオサマは容易には捕まらず、2001年9月11日、ワールドトレードセンターの双子ビルに、飛行機がテロリストにより激突、ビルは二つとも崩壊したのだった。
感想
という感想を持ちました。イスラム原理こそ全てと思うオサマ・ビンラディンもひどいですが、資本主義による社会の発展、そしておそらくは西洋文明こそ全て、というようなロックフェラー家、ひいてはアメリカ政府の態度もねえ……。
ロックフェラー家の豪腕ぶりを示すエピソードに、ワールドトレードセンターを作る前にあった小規模な電機店街を立ち退かせたことが出てきます。ひと昔前の秋葉原電気街みたいなとこだったらしく、反対運動も起きてたのに、結局たちのかせたと。同胞にさえこれなんですから、異国の異教徒のことなんか気にもしなかったんでしょうかね。
あと、9.11の前にもビルに飛行機が突っ込む事故があったというのも意外でした。これは純然たる事故で、前の大戦が終わるくらいの年に、エンパイア・ステート・ビルに爆撃機😱が突っ込んでしまったそうで。
それでも機体のサイズが大きくなかったのと、ビルを頑丈に造ってあったおかげで持ちこたえられたようですが、それをヒントにしただろう9.11テロでは……。
当然双子ビルを建てる時もこの事故は念頭にあり、対策も「当時の技術」に対してはたててあったのですが……。技術の発展って諸刃の刃ですね。
あと、9.11テロ当時旧日本軍の「神風特攻隊」がヒントになったという話もありましたが、この1945年の事故がヒントになっていたのか、という気分です。
話は飛んで、サウジアラビアの話。初代王イブン・サウードも、彼の治世下で仕事をしたムハンマド・ビンラディンも、貧しかった国を富ませようと必死だったのだと思います。
外国に石油を売ったお金でイブン・サウード王はインフラを整えていくわけですが、その成果のひとつ、水道の普及を映した映像が印象に残りました。
子供たちが水道に集まって楽しそうに手足を水で洗っているのですが、本当に画期的なことだったろうと思います。
井戸から水を汲むやり方だと、どうしても溜まり水を使うことが多いでしょうから、衛生的にも、流し洗いができる近代水道って重要なんだと思います。ましてや水を得るのも大変な砂漠の国で、です。
映像に写った子供たちは、「なんていい王様なんだろう」とイブン・サウードに感謝したのではないでしょうか。
けれど、他文化圏からの技術で発展するということは、その文化面も受け入れるということになり、自分達の根っこがぐらつくような感覚もうけるんでしょうね。イスラムの教えと西洋文明の間にどんな軋轢が起きるのか、どちらにとっても異教徒である私にはわかりませんが、一定の豊かさを達成した国が、目標を見失ったような状態になるのはなんとなくわかります。
番組中でオサマ・ビン・ラディンが帰国後、米軍が闊歩している母国に失望しますが、米軍が来ていたのは1990年のイラクのクウェート侵攻(湾岸戦争)のあおりだったようです。湾岸戦争も当時は、イラクのサダム・フセインがとち狂って攻めてきた、的な解説が多かったような記憶があるのですが、実際には色々利権がこじれて起きた部分も大きかったようです。それをアラブ側から見ていただろうオサマには、思うところがあったのかもしれません。
番組で語られなかったアフガニスタン戦争とイラク戦争への道
9.11後のことは、この20年間にあったことをさらっと流した感じになってましたが、9.11直後のアメリカは本当に殺気立っていて怖かったです。国民一丸でこのテロの仇を討つ、という感じでした。確かにテロの被害は約3000人の死者という莫大なものでしたが、私は、国家が背後にあったというのは難しいと思います。
それでも、「オサマ・ビンラディン狩り」をするためにアフガニスタンは米軍に戦争を吹っ掛けられ、そこにいなかったからと今度はイラクに攻め込み……。*1
両国ともに焼け野原にした挙句に、肝心のオサマ・ビンラディンはブッシュJr大統領の任期中には見つからず、結局次期大統領のオバマ大統領の任期中にやっとパキスタンで見つかり、米軍によって殺害されました。
しかし、もう少しアメリカが穏当な態度に出ていれば、もっと粘り強く引き渡し交渉でアフガニスタン政府を説得していれば……と思わなくもありません。
この一連の戦争で米国は外国の信頼を失い、また、米国内部でも国外派兵への忌避感情が醸成され、今年のウクライナ侵攻に対する、湾岸戦争の時のような多国籍軍の派兵はなされませんでした。
多国籍軍派兵には、常任理事国の許可がいり、侵攻主体のロシアが常任理事国であるため、できなかったのですが、ならばイラク戦争の時の有志連合のような組織を、と思っても、イラク戦争への悪評が高かったためか結成されず、物資援助のみという状況……。
悲しいものです。
その他
ムハンマド・ビンラディン氏、54人の子持ちって凄すぎませんか……。(オサマは17番目の子供だそうで……)イスラム教が一夫多妻を認めているとはいえ「4人まで」だったはず。と思ったら、離婚はして良いらしく、結婚離婚を繰り返したためのよう。「4人まで」は同時に持てる妻の数みたいですね。
ちなみに初代国王イブン・サウードの子供の数は89人だそうです。たくさんの妻妾を持ったためですが、これは国内をまとめるため「やらなくちゃいけないこと」でもあったそうで。
この王様、番組中でもタフな交渉家だったと言われていますが、本当に一筋縄ではいかないかただったようです。
窃盗犯は右手首を切り落とすという刑が、厳しすぎるという意見に対し
「何年も牢につなぐのと、手首を切るだけで釈放するのと、どちらが自由を尊重していると言えるのか」
と言ったり、
イスラエル建国に際し、
「ユダヤ人へのナチスドイツの償いを言うのであれば、ドイツの土地からユダヤ人の望む場所を割譲してやればよい」
と言ったとか。(いずれも大意です。参考:アブドゥルアズィーズ・イブン・サウード - Wikipedia)*2
本放送・再放送を見られなかったという方はこちらへどうぞ。(2023年9月9日まで)
アマゾンプライムからも見られます。
参考
ワールドトレードセンター (ニューヨーク) - Wikipedia
アフガニスタン紛争 (1978年-1989年) - Wikipedia
アフガニスタン紛争 (2001年-2021年) - Wikipedia
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